引き算ができるのが、プロなんだって
以前作った「水槽シミュレーションゲーム」の改良版を作ろうとしていました。
このゲームはすごくシンプルです。
魚にエサをあげると元気になる。でも水質は下がる。
掃除をすると水質は上がる。でも元気は下がる。
そこに水温や酸素といった要素を、少しずつ足していきました。
魚が何日生きられるか。30日間生き延びたら、クリアです。
しっかり考えれば長生きできる。考えなければ、すぐ死ぬ。
毎ターン、軽く頭を働かせるのが楽しくて、私自身が何回もプレイしていました。
この面白かったゲームを、もっと面白く、もっと「作品」らしくしたい。そう思ったのが始まりでした。
「全部、ひとつでできる」って言われて
まず、元の資料や記録、コードをAIに読み込ませて、企画書を作りました。
canvas機能で、スライドとプロトタイプも。
その時点の企画書は、元のゲームとほとんど同じ中身でした。
でも私が作りたいのは「改良版」です。だから資料をもとに、AIにアイデアを相談しました。
このとき設定したペルソナは「20代後半、推理や謎解きが好きで、知識欲の強い女性」。
「推理や謎解きが好き」――これは、昔の私自身です。
すると、意外な答えが返ってきました。
「全部ひっくるめたアイデアがあるよ!」
そんなことある?と胸を高鳴らせながら読んでみると、面白そうで。即採用でした。
……この時点で、よく考えておけばよかったなと、今は思います。
私も、想像力がなかった。
大好きな推理ゲームと謎解きと、水槽シミュレーションゲームが、全部ひとつでできる。それに感動してしまったんです。
あとから振り返ると、興奮のあまり、まともに企画書を読んでいなかったのかもしれません。
新しくできたゲーム「Aquarium」の企画書は、こういうものになりました。
- 育成
- 謎解き
- 推理
- ドキドキ
- 観察
- 知識
ぜんぶ盛り込んだ、企画書です。
ときめかない
実装し始めて、「あれ?」と思いました。
以前ゲームを作っていたときとは、まるで違う。
テストプレイをしても、心がときめかないんです。
おかしいな、と思いつつ、実装を進めました。
形ができあがるにつれて、楽しく……は、なりませんでした。
ときめかないどころか、むしろ「考えるのめんどくさい」とまで感じてしまう。
しばらくは、体調が悪いのかなと思っていました(笑)
でも、違った。
「これはゲームのアイデアが悪い!」と、やっと確信したんです。
そこから、どうしようかと考えました。
このまま「面白い」と言わせるには、相当作り込まないといけない。
開発初心者のレベルどころか、個人開発のレベルですら、ないかもしれない。
かといって、どの要素を削ればいいのかも、わからない。
「あきらめよう」
「つくりなおそう」
作り直そうと決めたとき、少しさみしさはありました。
でもその反面、もうどうにもならないものを手放した、軽さもありました。
全部混ぜても、おいしくなかった
好きなものや良いものを全部足せば、面白いゲームになる。
そう思っていたけれど、そうじゃないと分かりました。
食べ物と同じですよね。
全部ぐちゃぐちゃに混ぜて食べても、おいしくない。
シンプルに単体で食べたほうが、おいしかったりする。
それと、まったく同じだと思いました。
以前、一緒に働いていた上司が言っていました。
一生懸命、練習や勉強をして、足して、足して、足していくのは大事なこと。でも、最終的に引き算ができるのが、プロだよ。
個人開発でも、この「引き算」の大切さは、特に大きい気がしています。
足そうとする努力そのものは、大事です。初心者ほど、一生懸命足したくなる。
でも、足せば足すほど良くなる、わけじゃない。
盛りすぎると、遊ぶ人のほうが疲れてしまう。
どこで、足す手を止めるか。
その塩梅が、いちばん難しい。
足す手を止める、その塩梅。たぶんこれから何回も、つまずくところだと思います。